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あまりの大航海

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ボルドー酒場にて 9

 だから、さらっちゃったとか。あまり、心の中でこっそりつぶやきます。だけど商店主のオスカーさん、だんだん真剣な表情になってきてまして、とても口に出しては言えません。
「だから、さらっちゃったとか」と、たばさ姉です。あ、だから、たばさちゃん、ここでそんな突っ込み入れちゃだめだって! しかし、オスカーさん、あっさりと「いやいや、たしかにあの頃、私は海賊だったが、そんな乱暴なことは言わない」と、やんわりと返します。
 そして、続けます。
「ただ、こう言ったんだ。俺は海賊から足を洗ってカタギになるから、あんた、俺のところに来ないかって。それから、こうも言ったな。でなけりゃ、俺があいつを殺してやるってね。そして、あいつの手を引き寄せた……。今から考えるとめちゃくちゃなんだが」
 あまり、大変驚きます。手にしたシェリーのグラスを、思わず落としそうになります。
 たばさ姉も、隣でシェリーにむせそうになってます。
 酒場マスターのジュリアンさんが口を開きます。「オスカーさん、あんた、そんなことまで言ってたのかい。それじゃ、まるで脅しじゃないか」しかしジュリアンさん、なんだか面白そうな顔つきをしてます。
「ああ、たしか、そんなことを口走った」と、オスカーさん。「その瞬間まで、まさか自分がそんなことを言うなんて思ってもみなかったけどな。いや、本当に」
 そ、それからどうなったの? あまり、つい尋ねたくなりますが、じっと我慢します。ついでに、たばさ姉の発言を目で制します。オスカーさん、続けます。
「うん。たしかに今考えてみれば、あいつを脅したようなもんだ。それに、カタギになるにしても、相手の男を殺すにしても、なにせ、その瞬間までまるっきり考えてなかったわけで、だから、具体的に何をどうやるのか、もしそのときあいつから聞き返されたとしても、うまく答えたりはできなかっただろうな」
「若かったよな」とジュリアンさん、なぜか苦笑してます。
「ああ。だけどな、そのとき私は思ってた。……俺は、絶対に間違ってない。言うべきことを言った。そんな確信があった」
 あまりとたばさ姉、よっぽど意外そうな顔をしたんでしょうか、オスカーさん、ちょっと説明口調になります。
「いやまあ、お嬢ちゃん達に分かるか分からんが、常識では良くないとされることでも、それをするべき時ってのがあるもんだ」
 ふむふむ。そう言われれば、なんとなく分かるような気がします。あまりにそんな経験があるかどうかは内緒ですけど。だけど、うん。それよりも気になるのは、彼女の反応です。思わず今度は、あまりの口が開きます。
「あの、それで彼女、キャサリンさんって人、彼女は何と……」
「あいつは……、」オスカーさん、頭を振って考えるそぶりを見せます。「たしかに少し震えてはいたが。うん、青褪めて、だけどしっかり俺を見ながら、一日待って下さい。今日と同じ時間にこの場所で、と小さな声で、はっきりと答えた」
 ここでオスカーさん、また一口ジョッキを傾けます。
「信じたよ、私は。この娘はあいまいなことを言って逃げるようなことはしない」
 あまりとたばさ姉、なぜかまじめな顔でうなずきます。
「ところがだ」と、オスカーさん。「次の日の夕刻、私を待っていたのは、なぜかこの男だった」
 酒場マスターのジュリアンさん、にやにや笑いながら頭をかいています。

(続く)

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国籍 ネーデルランド
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